ピラティスとヨガの違いとは?プロのトレーナーが詳細解説

ピラティスとヨガの違いとは?プロのトレーナーが詳細解説

ピラティスとヨガの違いについて、詳しくお話ししていきたいのですが、まずは簡単にまとめた図をご覧ください。

ピラテ画像ィスとヨガの違いの説明

ざっくりとまとめてしまいましたが、知っている事、知らない事、ありましたでしょうか?
以下、詳細解説していきます!

ピラティスとヨガの成り立ち

ピラティスとヨガ、なんとなくのイメージはお持ちかと思いますが、そもそもどんな風に、どうやって現代へ受け継がれたのか?
少しコアな話になってきますが、身構えず、ぜひ見てみて下さい。
私は歴史とか弱いので、授業の時は嫌だな〜なんて思った記憶がありますが…学んでみると面白かったです!
ルーツを辿ると今までのぼんやりしたイメージが、少し変わってくるかもしれません。

ピラティスの成り立ち

『ピラティス』とは開発者の名前であることをご存知でしょうか?

Joseph Herburtes Pilates(ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティス)は、1880年、ドイツの小さな町で生まれました。
幼年時代は喘息やリウマチ熱などに苦しむ病弱な身体でしたが、それらを克服するために身体訓練法や数多くのスポーツを行い、14歳になるころには、解剖図のモデルになるほどの健康体となりました。

1914年、第一次世界大戦が勃発。
イギリスで捕虜となり、看護師として仲間の捕虜や健康の回復の手助けを始めました。
そこで負傷兵のために、ベッドの上で寝たきりで行えるリハビリとして開発され、彼はそのメソッドを「コントロロジー」と名付けました。
そのコントロロジーこそが、現在の「ピラティス」の始まりなのです。

その後、ピラティス氏は瞑想・モダンダンス・トリガーポイントセラピー・呼吸法など、様々な健康法に興味を持ち、ヨガの要素も取り入れ、研究を続けました。
1926年、ピラティス氏はニューヨークへ渡りスタジオを構えます。顧客は上流階級の人々や、ダンサー、体操選手、職人など多岐に渡りました。
特にダンサーを中心として徐々に広まると、数多くのダンサーや振り付け師がピラティスの下で学び、ダンサーにとってコントロロジーはなくてはならない存在となったのです。

ピラティス氏は86歳でこの世を去りました。
余談ですが、病死ではなく火事の後遺症が原因であることから、事故死とされ、彼自身がコントロロジーという健康法の証明となったのだと、弟子たちから現代へと受け継がれています。

ピラティス氏の画像
ピラティス氏

ピラティス氏の死後、「コントロロジー」は「ピラティス」に名前を変え、全世界へ浸透していきました。

『contorology』(コントロロジー)という理念は、ピラティス氏のつくった造語です。
身体(body)と頭(mind)と精神(spirit)が完全に調和し、コントロールできる状態にあることを指しています。
ピラティス氏は、「心が身体を支配する」または「身体が心を支配する」と言った理論では、長年に渡る健康についての問題は解決できないと考えていました。(例えば、瞑想さえしていたら身体の調子も良くなる、あるいは筋トレさえしていたら心はいつも平和だ、みたいなことです。)

心の働きと肉体的限界の両方を知ることこそが、心と身体を完全に調和させること、つまり「健康」への近道だと説いています。

『真に理想的な肉体を健全な精神とともに造り上げるトレーニング』

ピラティス氏のメソッドは、幅広い年齢層に対応できるエクササイズとして全世界へ広がっていきました。
現代では、ひとつの健康法としてだけではなく、スポーツ界や、医療などにも取り入れられ、彼の「コントロロジーを通して、全ての人の健康と平和な社会を願う」という想いが受け継がれています。

ヨガの成り立ち

ヨガの起源は諸説ありますが、4500年以上前のインダス文明において、起源となる修行が行われていたと考えられています。
悟りを求める修行者が坐法を組んで瞑想を行っていましたが、瞑想だけではその高みへ辿り着けず、呼吸法を生み出し、さらに森羅万象、生物などの霊性を自らの身に取り込もうとする中で、ポーズ(アーサナ)を考案したのではないかと言われています。

紀元前600年前後に、奥義書である『ウパニシャッド』の中で、初めてはっきりと「ヨガ」という言葉が登場します。
ヨガとは、古代インドで使われていたサンスクリット語の「馬を車に結びつけるくびき」を意味する動詞の「yuj(ユジュ)」から派生した名詞です。馬車を上手に操るという例えから、「融合・結合・コントロールする・バランスをとる」という意味があるとされます。

ヨガのイメージ画像

ヨガの体系が完成したのは、紀元後300〜500年ごろとされており、同じころに『ヨガ・スートラ』と呼ばれるヨガ思想が記載された基本文献が誕生しました。
インド哲学の一派である、ヨガ学派について、ヨガ・スートラには「ヨガは三昧であり、心の状態である」「ヨガは心の作用を止滅することである」などと記されており、やはり「悟りを得る」という高みに到達するためのものとして考えられていたようです。

ヨガ・スートラに記されていた、高みに到達するための8つのシステム「アシュタンガ・ヨガ」があまりにも難しかったため、ポーズ(アーサナ)や呼吸法(プラーナヤーマ)などの肉体を浄化し強化する鍛錬により、自己を超越する「ハタ・ヨガ」が出現します。
このハタ・ヨガが、現代ヨガの元となり、少しずつ変化しながら、心と身体をリラックスさせ、健康的な日々を送るためのツールとして普及しています。

現代ヨガでは、自己を超越するためにヨガをする人は少なく、健康や美の追求の一環として大きく形を変えています。
しかしその一方で、ヨガが精神の安定に効果的だと言われているのは、ヨガの起源である「悟りを得る」ために「雑念を捨てる」という思想が根強く残っているからなのかもしれません。

ピラティスとヨガの違い

起源について長々とお話ししてしまいましたが、とにかく元は全くの別物だったとお分かり頂けたでしょうか。
がしかし、現代のピラティスとヨガを見る限り、同じじゃん…と感じる方も多いと思います。
見た目だけじゃ分かりにくい、だけど結構違う!
現代ピラティス・ヨガを詳しく比較していきましょう。

呼吸法の違い

【胸式呼吸のピラティス】
腹筋を引き締めた状態で行うピラティスは、胸式呼吸を中心に行います。
ラジオ体操の時に手を高く大きく広げて深呼吸をしますよね。あのイメージです。

胸式呼吸では、主に「横隔膜」と「肋間筋」の働きで呼吸をしています。
肋骨の下の方に位置している、「横隔膜」を意識的に動かすことで、体幹が安定しやすくなります。
また、腹式呼吸に比べ肋骨が大きく動く事で、背中や胸の筋肉も動くので、肩や背中、首の筋肉のコリをほぐす効果も期待できるのです。

胸式呼吸をすると、「交感神経」が優位になります。
交感神経は筋肉を緊張させたり、体を活動的にする作用があるので、1日の始まりのラジオ体操や、ピラティスでの筋力トレーニングに最適だと言えます。

ゴミやウイルスのフィルターの役目をする鼻から吸って、口から細く長く吐き切ります。
口から吐くことで呼吸の強さや長さをコントロールして、呼吸と身体の繋がりを強く感じることができます。

【腹式呼吸のヨガ】
ヨガは元々、瞑想が起源だというお話をしましたが、そのため様々な呼吸法が存在します。
その中でも現在主流となっているのは腹式呼吸です。
腹式呼吸は横隔膜の動きにより、お腹を膨らませ、胸式呼吸よりも多くの空気を取り込む事のできる呼吸法となります。

腹式呼吸では、「副交感神経」が優位になります。
ピラティスで優位になる交感神経の対となる神経で、呼吸を落ち着かせたり、心身をリラックスさせる作用があります。何かの本番前や、緊張している時、深呼吸は自然と腹式呼吸になっていることが多いです。
ひとつのポーズを保ち、ゆっくりと腹式呼吸を行うことで、緊張している身体を緩めます。
夜のヨガのレッスンなどに最適な呼吸法でしょう。

ヨガの呼吸は、鼻から吸って鼻から吐きます。
身体をアクティブにさせるピラティスとは違い、ゆったりと落ち着いた呼吸と身体の動きを意識する為です。

マットの違い

【ピラティスは分厚いマットが快適】
仰向けや座った状態で行うことの多いピラティスは分厚くてクッション性の高いマットがオススメです。
個人差はありますが、10〜12mmのマットの厚さが良いでしょう。

薄いマットだと、座骨や、背骨、膝などが床について、痛みを感じたりアザになってしまうことがあるので注意してください。
痛みによって正しい動きが出来なくなってしまうと残念ですね。

ちなみにこの画像のマットは、12mmの厚さがありますが、8mmや10mmの比にならないくらいに快適です!

厚さ12mmのマット画像

【ヨガのマットは滑りにくい素材を】
様々な体制でポーズを保つヨガは、滑りにくい素材のマットがオススメです。
マットの厚さは6mm前後あれば十分でしょう。
ただ、ヨガでも座ったり膝をつくポーズがあるので、骨が当たって痛い方はタオルを敷くなどして対処してください。

写真のマットは5mmです。ヨガだけなら特に痛みを感じることはありませんし、持ち運びもしやすいので便利です。

厚さ5mmのマット画像

動的ストレッチと静的ストレッチ

【ピラティスは動的ストレッチ】
動的ストレッチは、伸ばしたい筋肉の反対側の筋肉を収縮させる事で、対象の筋肉の柔軟性を上げるストレッチです。

ピラティス氏のトレーニング画像

ラジオ体操をイメージして頂くとわかりやすいと思います。
リズミカルに身体を動かし続ける事で、筋肉の伸縮を促し、関節の可動域を広げることができます。筋肉の伸縮性が上がる事で、力を発揮しやすくなる為、近年ではスポーツ界でも有効な準備運動として取り入れられています。
ピラティスは、一呼吸一動作で行い、流れるように動き続けるので、動的ストレッチと同じ効果があります。

【ヨガは静的ストレッチ】
筋肉が伸びている状態を、30〜60秒程度保持する事で、筋肉の柔軟性を高めるのが静的ストレッチです。

ピラティスのイメージ画像

体育の授業などでよくやる、「アキレス腱伸ばし」をイメージしてみてください。
保持している間、ゆったりとした呼吸を取り入れる事で、副交感神経を優位にし、筋肉の緊張を緩めて関節の可動域の拡大が期待できます。

しかし、静的ストレッチの後は、筋肉の力の発揮は弱くなり、関節の可動域が必要以上に広がる可能性もあるので、準備運動としてはあまり向いていません。クールダウンや1日の終わりに取り入れると効果的です。

効果の違い

【全身を鍛えるピラティス】
ピラティスとは、自身の体重のみを利用し身体を動かすことで、関節や筋肉に余分な負荷をかけることなく体幹部に近い筋肉(インナーマッスル)から、表面にある大きな筋肉(アウターマッスル)まで、左右のバランスを整えながら鍛えることのできる効率的なトレーニングです。
さらに、呼吸法を重視しており、身体の動きに合わせて呼吸法を行うことで、自然と心と身体の双方に働きかけるので、生理学的、解剖学的にも有効だと考えられています。

骨盤や背骨の細かい動きに注目し、インナーマッスルに働きかける事で姿勢改善や、腰痛改善などの効果が感じられます。
インナーマッスルである骨盤底筋は、特に産後や高齢者の方が緩みやすい筋肉のひとつなので、そのような方々にピラティスは効果的だと考えられています。

柔軟性を高めつつ、全身の筋力アップが期待できるピラティスは、日常生活での身体の動きの向上、しなやかな身体づくり、パフォーマンス向上なども期待できるでしょう。

【柔軟性を高めるヨガ】
ゆったりとした呼吸でひとつのポーズを深めるヨガは、筋肉の柔軟性を高める効果があります。
なので、筋肉量はあるが身体が硬くて不調を感じる方などに適しています。

もちろん、ヨガでの筋力アップも期待できます。
ピラティスより強度は低くなりますが、全身まんべんなく筋肉を使う事ができます。
運動に自信のない方でも、手や足を大きく動かすポーズが多いので無理なく全身運動を行えるでしょう。

また、先ほど触れたように、ヨガは腹式呼吸をゆったり行うので、落ち着いて呼吸だけに意識を向けることができ、忙しい毎日からホッと一息つきたい方にもオススメです。

ピラティスとヨガの共通点と選ぶポイント

少しずつそれぞれのイメージが湧いてきたでしょうか。
違いを詳しくみてきましたが、実は共通点もあるのです!
ピラティスとヨガ、どちらを選ぶか?はたまたどちらもやるのか?
もう少しお付き合いください。

共通点その1 有酸素運動

運動には有酸素運動と無酸素運動が存在しますが、ピラティス・ヨガはどちらも有酸素運動に分類されます。
有酸素運動とは、ウォーキングやジョギングのように、低〜中負荷の強度の運動を継続的に行うものです。

無酸素運動の代表的なものでは、短距離走やウェイトトレーニングが上げられますが強度が高く、しんどそうなイメージがありますよね。

それに比べて、有酸素運動は強度が低いので、体力に自信のない方や、運動が苦手な方にとっては、始めやすく継続しやすい運動です。
また、有酸素運動は、主に脂肪をエネルギー源とするため、体脂肪燃焼の効果が期待できます。呼吸をすることで自律神経に働きかけ、精神の安定に繋がるとも言われています。

有酸素運動と無酸素運動や、太る・痩せるのメカニズムについては後日詳しく書くので、ぜひチェックしてみてくださいね。

共通点その2 伸張性収縮

伸張性収縮とは、筋肉が力を発揮する時、つまり筋肉の収縮の仕方です。

筋肉の収縮には大きく分けて、3つ種類があります。

①短縮性収縮(コンセントリック)
例えば、腹筋運動をしている時、お腹がぎゅーっと縮まっている感覚がありますよね?
まさにそのお腹が、筋肉が力を発揮しながら短くなる、短縮性収縮をしています。

②伸張性収縮(エキセントリック)
今度は、腹筋運動をしているところから、仰向けに頭を下ろすイメージをしてみてください。
力を完全に抜いて、バタンと倒れてしまってはいけません。
お腹の力を使いながら、ゆっくり背骨を床に下ろすイメージです。これが、腹筋が伸張性収縮をしている状態です。
筋肉が力を発揮しながら引き伸ばされることを指します。

③等尺性収縮(アイソメトリック)
静的収縮と呼ばれることもあり、筋肉は緊張している、関節は動いていない状態です。
手と手を合わせてぎゅっと押し合いっこしてみてください。
身体は動かないけど筋肉は感じられませんか?主に姿勢を保持するときなどに使われます。

私たちは全ての動作において、この3つの収縮全てを使い分けながら生活しています。
ピラティス・ヨガも、どれかひとつだけという訳ではなく、全てを駆使しています。
その中でも特に重視しているのが、②伸張性収縮なのです。

短縮性収縮と伸張性収縮の比較画像
短縮性収縮と伸張性収縮

腹筋で身体を上げることはできるが、バタンと倒れてしまう状態では、身体のコントロールが出来ているとは言えません。
短縮性収縮の後に、どれだけ伸張性収縮を使って身体をコントロールできるかが肝となります。

ピラティスもヨガも、身体を最大限引き伸ばした状態を保ち、しなやかな身体の動きを体現するために、この伸張性収縮を最大限活用しているのです。

ヨガティスのすすめ

さて、今までのことを踏まえて、ピラティスとヨガ自分にはどっちがいいのか?
なんとなくイメージが湧いてきたでしょうか。

そして、「ピラティスもヨガも両方やっちゃう」選択肢をご提案します。

ヨガティスのイメージ画像

ピラティスとヨガ、どちらかで迷う方はたくさんいらっしゃいます。
悩んでる方によく言われる言葉は、こんな感じじゃないでしょうか。

「ダイエット・筋力アップするならピラティス」
「精神的な落ち着きを求めるならヨガ」

確かに正しいです。
しかし私は、ピラティスにも精神的アプローチはあると考えていますし、ヨガにも肉体的アプローチができると考えています。

そこで私がオススメしたいのは「ヨガティス」です。
ヨガティスとは、その名の通り、ヨガとピラティスを融合させた新しいメソッドです。

ヨガだけでは筋力アップが足りないと感じる、ピラティスだけでは柔軟性の向上を感じられない。ピラティスもヨガもしてみたいけど、どっちも受ける時間がない。
そんな方は、「ヨガティス」で両方のいいとこ取りしてしまおう!というお話です。

何にでも相性があるので、まずは、それぞれ体験してみてください。
ヨガティスのいいとこ取りの体験もしてみてくださいね。

そもそもヨガティスってなに?という方のために、ヨガティスについては、次のブログで詳しく書きたいと思います!

まとめ

ピラティスとヨガの違い、いかがだったでしょうか?

ピラティスとヨガはそれぞれ奥が深く、とても楽しいです。
また、それぞれを補い合ったメソッドのヨガティスも、とっても楽しいのです。

身体も心も、健やかな毎日を送るためのツールとして楽しんでください!

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